プロフィール
名古屋大学工学部機械航空宇宙工学科の4年生です。
2021年度の院試を受け、工学研究科航空宇宙工学専攻に合格しました。
大学院入試について
院試説明会
- 3月と4月に開催されており、外部生も気軽に参加することができます。
内容
- 募集要項、変更点、諸注意などについて説明
- 今年は、昨年に引き続きコロナの影響で院試自体が行われるか決定されておらずホームページをよくみておくようにと言われる
- TOEICについては、昨年と違い必要となるので取っておくようにと言われる
今年は全てオンラインで行われ、
約100分間で全27研究室が何をしているかを動画やスライドで説明されました。
外部生にとっては、何をしている研究室なのかがなんとなくわかると思います。
内部生にとっては、4年生での研究室配属のときにされる説明と同じ内容なので退屈になるかもしれません。
内部生の4年生の研究室配属の方法
配属は3年次までの成績上位者から順に決定されます。
ただし、全研究グループの配属数が事前に定める最小配属人数以上となるように配属人数が調整されます。つまり、配属が0人となる研究室が出ないようにするということです。
成績の順位付けの方法については公開されていませんが、噂では単純なGPAによる順位ではなく、総単位数を加味して計算されたものが使われているようです。
名古屋大学の機械航空学部について
名古屋大学の機械航空は、
機械システム工学専攻、マイクロ・ナノ機械理工学専攻、航空宇宙工学専攻の3つの専攻に分かれています。数年前から試験制度が変わっており、「機械航空系」として受験することになり試験内容は全て同じとなります。試験前に、専攻と研究室の希望順位を決めることになります。
専攻の難易度としては航空宇宙工学>機械システム工学≥マイクロ・ナノ機械理工学のイメージです。
他大学からの進学者も多く、全体の1割〜2割ほどいるように思います。
試験日程
1日目 基礎科目 13時30分 〜16時30分
2日目 専門科目 9時 〜12時
3日目 面接 10時 〜
試験科目の配点
配点は公表されていませんが
英語(TOEIC) 200点
基礎科目 数学 50点 ×4
物理学 100点
専門科目 100点 ×3
合計 800点
と言われています。
合計で約55%が合否ライン、約60%あれば受かり、
合格者平均は約65%と言われています。
研究室配属は完全成績制であり、1位の人から決めていくことになります。
学修希望調書
正直面接でこの内容が聞かれることはほぼないので、あまり力を入れず埋めることを目標に書けばいいと思います。
1.卒業研究の内容又はその計画を書きなさい
自分が研究していることをそのまま書きました。
2.大学院に入学する目的を書きなさい
大学院に入学することで身につけたい能力や卒業研究より発展的で研究したい内容などを書きました。
3.入学後において特に学習したいと思う分野、第1志望あるいは…
学習したい分野は自分の研究分野について書き、志望理由は素直に思ったことを書けばいいと思います。
科目別勉強方法
勉強方法については実際に筆者が行なった方法を書きますが、参考程度にしてもらえると幸いです。
基 礎 英 語
まず、提出締め切りがある英語を優先して勉強し、それから基礎科目を勉強することになると思います。
英語(TOEIC)
事前に受けることが必須となっています。
最低700点台、800点台あれば安心、900点台あると周りより有利、600点台は周りより不利になってしまうというイメージです。
平均が750〜780点と言われています。
TOEICに関しては、800点をとるつもりで勉強することがいいと思います。
提出に間に合う一番遅い試験は5月ですが、余裕を持って3月、4月までには目標スコアを取っておくと楽になります。
《 英単語 》
最初に始めるべきなのが、英単語です。
TOEICで出題される英単語は大学受験のものと違いビジネス英単語がメインとなります。
文自体は比較的簡単なのですが、単語の意味が分からず設問に間違えてしまうことがあります。
また、単語の意味さえ分かっていれば誰でも解ける設問も多くあるため、点数に結びつきやすいと思います。
おすすめの単語帳は王道ですが、金のフレーズです。
リスニング
普段から英語に触れている人は特に勉強もせずにとれてしまうパートですが、筆者はリスニングが苦手であり一番力を入れて勉強しました。
リスニングに特化したこちらの参考書
TOEIC(R)テスト 新形式精選模試 リスニングを1冊買い何度もくり返しました。
解き方については、
- パート別に問題集を解く
- 間違えた箇所を確認
- スクリプトを見ながら、聞き取れなかった箇所を確認
- 暇な時にひたすら音源を聞き、英語で理解できるようになるまでくり返す
時間があればスクリプトを見ながら、音声に被せてスピーキングすると、よりリスニングが強くなっていくと思います。
リーディング
文法、リーディングに関しては大学受験時代の貯金でどうにかしたため、これといって参考書を使っていません。公式問題集を繰り返し、英語に慣れていきました。
問題自体はそこまで難しくないのですが、英語が得意でないと時間が足りなくなると思います。
問題集を解くときは、必ず時間を測り、本番ではマークする時間が必要となるので少し厳しめの時間設定で解くといいと思います。
公式TOEIC Listening & Reading 問題集 7
線形代数
線形代数は満遍なく全範囲から出題されます。
計算問題だけなら解き方を覚えて点を取ることができますが、概念的なことを問う出題もあり、基礎から深く理解することが必要となります。
理解するのに苦労しましたが、教科書で基本を確認し、マセマの演習線形代数を通して徐々に解けるようになっていきました。
過去問を解くとこういう問題も出るのかとなるので、定期的に解くといいと思います。
時間に余裕がある方は、サイエンス社の演習と応用線形代数をやると満点も狙えるレベルになると思います。
<教科書>
培風館の入門線形代数
<参考書>
マセマ出版社 演習線形代数
サイエンス社 演習と応用線形代数
微分、積分
微分・積分はあまり深いところまで出題されず、基本問題が中心です。
個人的に微積は基礎科目の中で一番コスパが悪い科目だと思います。
当日の問題との相性や計算力次第なところがあります。
教科書で基本を確認し、マセマの演習微分積分を通して、基礎知識や必要な積分公式、解法を理解していきました。実際に手を動かして解いた問題は、自分が弱いと思った分野だけであり、演習は過去問をベースに行なっていました。
時間に余裕がある方は、サイエンス社の演習と応用微分積分をやるといいですが、正直そこまでやる必要はないと思います。
<教科書>
培風館 入門微分積分
<参考書>
マセマ出版社 演習 微分積分
サイエンス社 演習と応用微分積分
常微分方程式
常微分方程式は完全にパターン問題であり、得点源となります。
教科書と学部時代のノート、プリントしか使いませんでした。
教科書に載っている範囲は広いですが、院試には基本的に学部のときに勉強した範囲しか出題されないので、該当箇所のみ勉強しました。問題に合った解法を覚えるだけで、計算ミスをしなければ解くことができるので、コスパが非常にいいです。
演習は過去問をベースに行いました。
周りにはこれに加えて、マセマの演習常微分方程式を使っている人も多かったです。
時間に余裕がある方は、サイエンス社の演習と応用微分方程式をやるといいですが、これも正直そこまでやる必要はないと思います。
<教科書>
培風館 常微分方程式
<参考書>
マセマ出版社 演習常微分方程式
サイエンス社 演習と応用 微分方程式
ベクトル解析
ベクトル解析は簡単と言われることが多いですが、筆者は正しく理解するまでに時間がかかりました。理解してしまえば得点源になります。
教科書で基本を確認し、マセマの演習ベクトル解析、サイエンス社の演習と応用ベクトル解析を通して理解していきました。
出題は、線積分、面積分、体積分からが中心となります。ストークスの定理やガウスの発散定理を使った問題は頻出であり、定理を使わずにも解けるようにしておくといいと思います。また、方向微分係数など知らないと解けない問題が出題されることもあるので頻出範囲以外も勉強しておく必要があります。
<教科書>
コロナ社 工学・物理のための基礎ベクトル解析
<参考書>
マセマ出版社 演習ベクトル解析
サイエンス社 演習と応用ベクトル解析
力学
基礎科目の中で得点が2倍と噂されている科目あり、重要視されているため高得点を取る必要があります。難易度はそこまで高くないので、基本問題を取りこぼさないことが大切になります。
大学受験時代の物理の勉強に加えて、質点系と剛体の勉強をしました。
教科書とサイエンス社の演習力学を通して基礎を理解し、演習は過去問をベースに行いました。
近年は剛体からの出題が多く、質点系からの出題もあります。
特にこの2つの分野は対策する必要があります。
有名な参考書はサイエンス社の2冊です。内容の違いはほとんどないので、レイアウトの好みなどで選んでいいと思います。時間に余裕がある方は詳解力学演習で苦手分野を補強するといいです。
<教科書>
裳華房 力学Ⅰ:質点・剛体の力学
<参考書>
サイエンス社 新・演習 力学
サイエンス社 演習 力学
共立出版 詳解 力学演習
《 専 門 科 目 》
熱工学、流体力学、機械力学、制御工学、材料力学の5科目から3科目を選択して解答します。
一般的に、4科目勉強しておき、問題内容を見て簡単そうなものを3つ選択して解くことが理想です。時間に余裕がない場合は3科目に専念してもいいと思いますが、年度によって科目ごとの難易度が違うのであまりおすすめしません。
筆者は今年から範囲が変わった科目もあるため、熱工学、機械力学、制御工学を選択するつもりで勉強し、保険として材料力学を勉強しました。
熱工学
今年から熱力学に加えて、伝熱工学も範囲に含まれました。しっかりと勉強すれば得点源にできます。
熱力学
まずは、教科書と学部時代のノート、プリントを中心に勉強し、基本を確認しました。
教科書は表現が堅い部分もあり最初は読みづらいかもしれませんが、途中式も詳しく、必要な知識が全て書かれています。式の導出手順や定義をしっかりと理解することが大切です。
仕上げれば自信を持って試験に臨めると思います。
次に、復習と解法の確認のためにマセマの演習力学をしました。教科書の内容が大体頭に入っていれば、スムーズに終えることができると思います。
最後に、演習を過去問で行いました。
サイクルの問題は似たような定義式を用いて計算を進めるだけなので、
確実に解けるようにしたいです。
熱力学的関係式の問題は、覚えていないと難しい部分もあるので手を抜かずにやった方がいいです。
ジュールトムソン効果やスターリングサイクルなど知識が必要な範囲からの出題もあるので注意が必要です。
<教科書>
日本機械学会 熱力学(J S M Eシリーズ)
<参考書>
マセマ出版社 演習熱力学
伝熱工学
今年から範囲に含まれ、今まで範囲に含まれたこともないので、過去問が一切ありませんでした。
本番で解けそうにない問題が出題されたら他の科目を選択するつもりでした。
範囲は狭いため、それほど時間をかけず、教科書と学部時代のノートとプリントを中心に授業でやった部分のみを勉強しました。
本番では、小テストのような簡単な問題が出題されたため、楽に点数を稼ぐことができました。
<教科書>
日本機械学会 伝熱工学(J S M Eシリーズ)
流体力学
あまり選択している人を見たことがないです。筆者も選択していないのでよくわかりません。過去問の解答も多くないので、選択する場合は一緒に解いて答え合わせができる人がいると勉強しやすいと思います。
機械力学
基礎科目の力学の延長で勉強することができます。パターン問題が多いこともあり、基本を理解すれば安定して得点を取ることができます。
教科書で基本を確認し、演習は過去問をベースに行いました。正確に運動方程式を立てられるようになれば、あとは計算問題となります。
粘性減衰系の強制振動や2自由度系の自由振動が頻出です。モードベクトルを使った基準座標への変換はできるようにしておくといいです。ラグランジュ方程式は範囲には含まれていますが、少なくとも過去10年出題されていません。振幅倍率など知らないと解けない問題が出題されることもあるので、用語の定義は確認しておくことが必要です。
<教科書>
培風館 機械振動工学
制御工学
今年から古典制御に加えて、現代制御も含まれました。
しっかりと勉強すれば得点源にできます。
勉強するときの難点としては、演習するいい教材がないことです。
古典制御、現代制御ともに、まずは教科書を読み、考え方と用語の意味を理解しました。
ここで完璧にしようとは思わず、7割ほど理解できれば演習に進んでいいと思います。
演習は過去問をベースに行いました。
数年分を1回解いてみると出題のされ方や理解が甘い部分が分かると思います。
1周目は解けないことが当たり前と思って行い、分からない、不安な箇所を教科書に戻って1個ずつ潰していきました。全体から満遍なく出題されるので、焦らず確実に理解していくことが大切です。
分かってしまえば、似たような解法でワンパターンな問題も多く、解きやすいと感じる科目になると思います。
<教科書>
古典制御
コロナ社 古典制御論
現代制御
コロナ社 現代制御論
<過去問>
機械航空系となったここ数年分は古典制御のみからの出題です。
現代制御の過去問演習をする場合は、機械システム専攻と航空宇宙工学専攻で試験内容が分かれていた2016年以前の問題のうち、航空宇宙工学専攻のものを解くといいです。
材料力学
見たことがない設定の問題や計算量が多すぎる問題の年、逆に基本問題で簡単な年もあり、安定して得点を取ることは難しいように感じました。
年度によっては解答を作ることができない問題もありました。
まずは、教科書と学部時代のプリントを使って基本を理解しました。
特にはじめての材料力学は完璧に解けるようにした方がいいです。
著者が名大の教授であることもあり、掲載されている演習問題とほぼ同じ問題が過去に出題されていることもありました。演習は過去問をベースに行い、教科書に詳しく書かれていない部分をJSMEで補うようにしていました。時間に余裕がある方は、サイエンス社の演習材料力学で苦手分野を補強するといいです。
<教科書>
講談社 はじめての材料力学
<参考書>
日本機械学会 材料力学(JSMEシリーズ)
サイエンス社 演習材料力学
<有名な参考書>
培風館 機械系大学院への四力問題精選
私は使っていませんが、大学院試験ではかなり有名な本です。
様々な大学の過去問を集めた問題集であり、難易度は比較的高いです。
過去問をやり尽くし、もっと演習問題が欲しいという方がやるくらいでいいと思います。
面接
面接は事実上の合否発表です。
正直面接の結果によって合否が変わるということはあまりないと思います。
合否については、機械システム工学専攻、マイクロ・ナノ機械理工学専攻は直接言われ、航空宇宙工学専攻はほのめかされる感じです
試験会場に9時30分に集合し、10時から順番に面接開始でした。
服装はほとんどの人がスーツで、数名が私服でした。スーツで行けば間違いないです。
面接の順番は受験番号順です。受験番号は願書の提出順なので早めに出すと待ち時間が減ります。
待ち時間はスマホなどの電子機器は電源を落として机の上に出すように言われます。
受験番号が後ろの人は待ち時間が長いので、暇つぶしに本を持っていくことをおすすめします。
面接は教授3人対1人です。
まず試験の出来栄えを聞かれます。
おそらく、採点結果や順位が書かれた紙を見ながら聞いています。
ここで合格だと、
他愛もない話をされ5分もかからず終わります。
ぎりぎりの合格だと、
「ほんとに危なかったよ」や「T O E I Cに救われたね」と小言を言われます。
他には、第1志望の専攻のボーダーには届いていませんが第2志望の専攻には合格していますとはっきり言われることもあるようです。
不合格の場合は、
「担当教員と今後についてよく話し合ってください」という内容のことを言われるようです。
配属先の決定
配属先は合格発表後に行われます。
合格辞退者も出るため、3回に分けて配属状況が知らされます。
最終決定は12月頃になります。